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宮部みゆき著 『火車』 (新潮文庫)

 クレジットカードなら私も持っているし、よく使う。普通の店舗でお買い物をするときに使うことはない。だが、ネットでの買い物だと、手数料のかかる代引きや、面倒なコンビニ払いよりもちょっとした入力だけで支払いが済んでしまうクレジットカードを利用する。

 気がつけば、アマゾンで6万円くらいの買い物をしているときもある。一回一回の買い物は、1万円以下が圧倒的に多く、「今月のアルバイト代で何とかなるかな」と思うことが多いが、それが積み重なれば、支払いのときに後悔するような金額になっていたりする。

 クレジットカードでの支払いは、現金での支払いと比べ、お金を払っている感覚はない。預金からいつの間にか引かれていて、もともと預金が少なかったのか、引かれたから少ないのかも分からない。そんなクレジットカードの利用の恐ろしさを描いたのが、宮部みゆきの『火車』だ。

 関根彰子は「幸せになりたかっただけなの」とクレジットカードでささやかな買い物を繰り返し、自己破産に陥る。そんな関根彰子のもとに偶然か、必然か、似たような境遇の女が現れ戸籍を奪ってしまう。
その過程を休職中の刑事が地道な調査で明らかにしていくというような内容だ。

 10年前の世相を反映して書かれた本であるにもかかわらず、今年書いた本と思って読んでもまったく違和感はない。『火車』にインターネットの話は出てこない。もしネットでの買い物が当たり前の現在なら、もっと違ったクレジットカードの使い方をしている主人公が出てきていたのかもしれない。

 この本を読むと、人の弱さや将来に対する見通し(金利が雪だるま式に増えるなど)にいかに鈍感なのかなどを考える。「どうしても目の前のものが欲しい」という欲求にクレジットカードは応えてくれる。そうした道具をどう使いこなすのか。

 クレジットカードは社会にとって無くてはならないもの、だけど、時には猛毒にもなりうることこの『火車』は示している。

 とにかく早く読み進めたいと思うくらい面白い。そして勉強にもなる小説だった。

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